求職者がどのような要望(欲求)を抱えて転職をしようとしているのかを分析し、採用戦略を立てることが、自社にとって理想的な人材の獲得につながります。その分析の際に役立つのが、アメリカの心理学者 アブラハム・マズローが考案した「マズローの欲求5段階説」です。本記事では「マズローの欲求5段階説」とは何か、5段階の欲求それぞれに属する求職者の転職理由やキャラクター、求職者に提示するのに適した条件や解決策を解説します。 「求職者が欲求5段階のどこに位置するのか?」を把握し、スカウトによるアプローチや面談や面接での意向上げに活用してください。 ※本文中に登場する求職者の型の説明は「求職者の5つの型と転職理由、魅力づけポイント」の記事にて解説しています。先にこちらの記事からお読みいただくと、本記事の内容が理解しやすくなります。1. 「マズローの欲求5段階説」とは「マズローの欲求5段解説」とは、1954年にアメリカの心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」と仮定し、人間の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階の階層で理論化したものです。 以下のピラミッド上の図のように、「人間には5段階の「欲求」があり、下の欲求が満たされると、1つ上の欲求を満たそうとする」という基本的な心理的行動を表しています。2. 生理的欲求「生理的欲求」とは、生きていくために必要な基本的・本能的な欲求のことです。 マズローはこの欲求について「疑いの余地なく、あらゆる欲求の中でも最も優勢なもの」とまとめています。具体的な例は、食欲・睡眠欲・性欲などです。2.1 生理的欲求に位置する求職者の転職理由や型生理的欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。生理的欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。 2.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。3. 安全の欲求「安全の欲求」とは、心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求のことです。身の危険を感じる状況から脱して、少しでも安心できる環境で暮らしたいという欲求につながります。主に事故・災害などが起きたときや、病気にかかったときなどに現れ、経済的な安全(保険・貯蓄など)や、哲学的思考の安定なども含まれます。 成長発達段階にある幼児は、この欲求を求めようとする行動が顕著に見られますが、大人の場合は危険や恐怖に対処する力が身についているため、安全の欲求は目立ちません。3.1 安全の欲求に位置する求職者の転職理由や型安全の欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。安全の欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。 3.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。4. 社会的欲求「社会的欲求」とは、集団への帰属や愛情を求め、「友人や家庭、会社から受け入れられたい」と思う欲求であり、「帰属欲求」とも表現されます。 この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなり、鬱に陥るケースもあります。人間には何らかの社会や集団に所属して安心感を得たいという欲求があり、自分を受け入れてくれる親密な他者の存在が不可欠だと言えるでしょう。4.1 社会的欲求に位置する求職者の転職理由や型社会的欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。社会的欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。4.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。5. 承認欲求「承認欲求」とは、「他者から尊敬されたい、認められたい」という欲求のことです。地位を求める「出世欲」もこの欲求に当てはまり、外的な欲求ではなく、内側の心の欲求を満たしたいという考えに変わります。承認欲求を獲得することは、行動のモチベーションになり、自分のポテンシャルへ気づくきっかけや、成長の原動力になっていきます。承認欲求は以下のように「低位」と「高位」の2つに分類されます。「低位」は他人からの賞賛などによって満たされるレベルですが、「高位」のレベルになると他人からの評価よりも自分自身の評価を重視する傾向になります。 この承認欲求が満たされずに妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。5.1 承認欲求に位置する求職者の転職理由や型承認欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。承認欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。 5.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。6. 自己実現欲求「自己実現欲求」とは、「自分の世界観や人生観に基づいて『あるべき自分』になりたいと願う欲求」のことです。自分にしかできないことを成し遂げたい、自分らしく生きていきたいという欲求であり、理想の自己イメージと一致していることを指します。 「自己実現欲求」は、マズローの欲求5段階説の中の最高位であり、この欲求だけは今までの段階の欲求とは質的に異なり「2. 〜 5.」で解説した欲求を満たすことで実現が可能です。6.1 自己実現欲求に位置する求職者の転職理由やキャラクター自己実現欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。自己実現欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。 6.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。7. 自己超越欲求「自己超越欲求」とは、マズローが晩年に発表した第6の欲求で、「見返りを求めず、ただ目的の遂行や達成だけを純粋に追い求める」という欲求のことです。他人からの視線や他者から認められたいといった欲求は眼中になく、ただただ達成したい目標に向けてひたむきに走っている人を指します。※マズローいわく、このレベルに達するのは全人類の2%ほどであり、転職市場においてこの欲求に位置する求職者はめったに存在しません。7.1 自己超越欲求に位置する求職者の転職理由や型自己超越欲求に位置する求職者の転職理由は以下のようなものがあります。自己超越欲求に位置しやすい求職者の型は以下です。※基本的には経営陣がこの欲求に位置することが多いので、この型は「求職者の5つの型と転職理由、魅力づけポイント」のマニュアルに情報を記載していません。7.2 求職者に提示するのに適した条件や解決策上述した転職理由の求職者に提示するのに適した条件、解決策は次の通りです。8.「マズローの欲求5段階説」を利用して求職者への最適なアプローチ方法を考えよう「マズローの欲求5段階説」を通じて求職者の欲求を理解し、採用戦略を展開することは、自社にとって理想的な人材の獲得につながります。生理的欲求から自己超越欲求まで、個々の欲求に基づいたアプローチや条件提示は、求職者の関心を引き付け、相互のミスマッチを防ぐ上で重要です。本記事では「マズローの欲求5段階説」について詳しく解説しました。求職者がどの段階に位置するのかを把握し、適切なアプローチや面談・面接での意向上げに活用しましょう。また、別の記事で紹介した「求職者の5つの型と転職理由、魅力づけポイント」を参考にすることで、より具体的な求職者の特徴や要望に対応することができます。欲求を満たす環境を提供することで、求職者は自己成長や充実感を得ることができ、結果として組織にとって価値ある貢献をすることが期待できます。是非、「マズローの欲求5段階説」を活用して、採用プロセスにおいてより効果的なアプローチを実践してください。