企業が求職者を検索して、スカウトを送信する「ダイレクトリクルーティング媒体」というものがあります。本記事ではダイレクトリクルーティング媒体を利用して、求職者からの自己応募、スカウト経由の応募を増やす方法を解説します。 従来の採用にありがちな「待ちの姿勢」ではなく、企業から積極的に求職者にアプローチをし、効率よくクライアントが必要とする人材との接点を生み出していきましょう。1. 「ダイレクトリクルーティング」とは?ダイレクトリクルーティングとは、従来の求人票を作成して求職者からの応募を待つ求人広告や人材紹介会社を介した採用ではなく、企業が採用要件を満たす求職者を検索し、直接アプローチをする採用手法のことです。1.1 ダイレクトリクルーティングのメリット、デメリット以下に、ダイレクトリクルーティングのメリット、デメリットをまとめました。1.2 ダイレクトリクルーティング媒体の運用を開始する前にダイレクトリクルーティング媒体の運用を開始する前におさえておくべきポイントを2つ紹介します。1.2.1 採用ペルソナ、ターゲットを明確に言語化しておく検索条件や検索キーワードを入力して求職者を見つけ、スカウトメールを送信するダイレクトリクルーティング媒体において、採用ペルソナ、ターゲットを明確にしておくことは非常に重要です。採用ペルソナ、ターゲットが明確になっていないと、以下のようなデメリットが生じるので、ご注意ください。 ※採用ペルソナとターゲットの違いは、以下の記事をご覧ください。【母集団形成】採用におけるターゲットとペルソナの違いは?それぞれの設定方法を紹介1.2.2 採用要件を満たす候補者数やスカウトの平均返信率のデータを調べる「ダイレクトリクルーティングを始めよう!」と決めても、「どのダイレクトリクルーティング媒体を使えばいいのだろう?」と迷ってしまうと思います。 そんなときは、利用を検討しているダイレクトリクルーティング媒体をリストアップし、各媒体の「自社の採用ポジションの要件を満たす登録者数」と「アクティブな求職者の割合(※)」と「その職種のスカウト平均返信率」をかけあわせて「スカウト返信数の期待値」を算出し、どの媒体を使うと採用成功の確率が高まるのか?データを調べることが重要です。 ※「アクティブな求職者」は「最終ログイン◯週間以内」や「最終ログイン◯ヶ月以内」で検索して表示される求職者、「積極的に転職活動をしている求職者」や「スカウト返信率が高い求職者」の項目にチェックを入れて表示される求職者など、自社で独自に定義します。2. 求職者からの自己応募を増やす方法求職者からの自己応募を増やすためには、以下の3つの観点に着目し、それぞれの数値を改善するためのアクションを行うことが重要です。2.1 インプレッション数を増やすインプレッション数とはWeb広告に用いられる単語で、ユーザーに広告が表示された回数を意味します。本記事では、求職者に自社の求人票が表示された回数という意味で用いています。インプレッション数を増やす5つの方法を解説します。2.1.1 検索タグや職種コード、職種分類の設定を見直す求人票作成時に「検索タグ」や「職種コード」「職種分類」を設定することがあります。 求職者がどの検索タグや職種コード、職種分類で検索をして、作成した求人票にたどり着くのか?を考えて、これらを設定する必要があります。 求人票の作成者が「この検索タグ、職種コードがいいと思う」というものを設定するのではなく、求職者視点に立ってタグやコードを設定するのがポイントです。2.1.2 求職者に検索されやすいキーワードを求人タイトルに記入する求職者がどのようなキーワードで検索をして、作成した求人票にたどり着くのか?を考え、求人タイトルに記載するキーワードを決めます。 社内で当たり前のように使用している単語や「求職者は、こういうキーワードで検索しないだろう」というものではなく、「求職者なら、こういうキーワードで求人を探すだろう」という視点で求人タイトルを作成します。解説 「プロダクトマネージャー」の求人票を作成する場合、タイトルに「プロマネ」や「PM」というキーワードを使用してしまうと、求職者は「プロジェクトマネージャーの求人かな?」と混乱してしまいます。「プロダクトマネージャー」の仕事を探している求職者は、求人を検索する際に「プロマネ」という略語や「PM(一般的には、プロジェクトマネージャーを指す)」というキーワードを用いないことが予想されます。2.1.3 希望条件に合致する求職者に求人票が自動送付されるように設定する求人票に設定した条件が求職者の希望条件に合致する場合に、求人票が自動送付されるように設定できる媒体もあるので、必ず自動送付の設定をしましょう。 求職者に自動で求人票が届くので、インプレッション数の増加が見込めます。2.1.4 作成した求人票を上位表示させる追加でオプション料を支払うことで、作成した求人票を上位表示してくれる媒体もあります。過去に同業他社が同職種で上位表示プランを利用したときの効果を媒体の担当者に聞き、利用するかどうかを判断するといいでしょう。 ※料金や上位表示の期間は媒体によって異なるので、利用している / 利用を検討している媒体の担当者に確認することをおすすめします。2.1.5 求人票の内容を修正し、新着求人扱いにする作成した求人票のどこか1文字でもいいので修正をして求人票を公開することで、その求人票が新着求人扱いになり、上位表示される媒体もあります。 ※どのダイレクトリクルーティング媒体でもこの上位表示ロジックが当てはまるわけではないので、利用している / 利用を検討している媒体の担当者にこの上位表示ロジックが適用されているか確認することをおすすめします。2.2 クリック数・クリック率を増やす利用するダイレクトリクルーティング媒体で作成した求人票が、PCやスマホで求職者からどのように見えるのかを事前に確認することが重要です。 媒体によって求職者に表示される求人タイトルの文字数や求人内容の範囲が異なるので、求職者が求人をクリックする前に目にする情報は何かを把握しておきましょう。2.2.1 求職者に刺さるキーワードを求人タイトルの冒頭に記入する募集する職種の求職者が転職時に重視することや転職で解決したいと考えていること、惹かれるであろうポイントや刺さるキーワードを予想して、以下の図のように、求人タイトルの冒頭から15文字以内に、求職者が求人票をクリックしたくなる訴求ポイントを記載することが重要です。求人タイトルの冒頭に刺さるキーワードを記入する理由 媒体によっては求人をクリックする前の段階では「求人タイトルの冒頭から◯◯文字までしか求職者に表示されない」という媒体があるためです。 冒頭に職種名を記載する企業が多く見られますが、そうしてしまうと自社のアピールポイントが求職者から見えなくなってしまうので、職種名は求人タイトルの最後に記入しましょう。2.2.2 求職者に働くイメージを湧かせる画像を使用するクリック数・クリック率を増やすためには、求人票に使用する画像の選定も重要です。 「この画像を使用することで、求職者にどんなイメージを湧かせたいのか?」「求職者の興味や関心を惹けるか?」を考え、採用ペルソナに合わせた画像を選定しましょう。 一緒に働くメンバーやチームの雰囲気、職場環境や職場の雰囲気が伝わる写真を掲載するのがおすすめです。2.2.3 求職者から見える部分の求人票の構成、記載内容を修正する求職者が求人をクリックする前の段階では、求人票のすべてではなく、一部の内容だけが表示されている媒体もあります。「求職者の目にどのような情報が、どのような順番で入れば、求人票のクリックを促せるのか?」を考え、求人票の構成、記載内容を修正しましょう。2.3 コンバージョン数・コンバージョン率を増やす「コンバージョン」は「転換、変換、変化」を意味する英単語です。 Webサイトを訪問したユーザーが何らかのアクションを起こして、行動が成果に「転換」することから用いられる言葉です。 ここでは、求人票を閲覧した求職者が「応募」という行動に至った数・率を意味しています。コンバージョン数・コンバージョン率を増やす3つの方法を解説します。2.3.1 求人票の構成を修正するコンバージョン数・コンバージョン率を増やしたいなら、求人票に「どのような情報を、どのような順序で記載するのか?」を考えて構成を決めることが欠かせません。 しかし、多くの採用担当者が「ペルソナが知りたい情報を、知りたい順序で」ではなく、自分が伝えたい情報を、伝えたい順序で求人票に記載しているのが実態です。 記載する情報の内容と順序を考慮せずに求人票を作成してしまうと、内容を読んでいる途中で「この求人は自分には合わないな」「興味がないな」「なんか違うな」と思われてしまい、離脱され、応募に至らなくなってしまいます。 ペルソナの視点に立ち、「どのような情報を、どのような順序で記載すると求人票を読み進めてもらえ、応募まで至るのか?」を考えて構成を修正しましょう。2.3.2 求人票の記載内容を修正する求人票の記載内容を修正するときに「最低でもここだけはおさえておきたい」という4つのポイントをお伝えします。①募集背景を具体的に記載する 求人票の募集背景に「事業拡大のため増員」「欠員補充のため募集します」と記載している企業がほとんどです。しかし、これでは求職者に「現在に至るまでにどのようなことがあって募集を開始したのか」という募集の意義を伝えられず、「自社の未来を見せてワクワクしてもらう」ことができません。 これらを解消するためには「過去 → 現在 → 未来」の時間軸に沿って、「『過去』にどのようなことを行ってきて、『現在』はどのような状態・フェーズなのか、『未来』にどのようなことを実現していきたいのか」を募集背景に明記し、求職者に伝えることが重要です。②任せたい仕事内容を具体的に記載する募集職種の仕事内容を箇条書きや抽象的な表現で記載していると、求職者は「これは自分がやりたい仕事に合致しているのだろうか?」「何を任されているのか、よくわからないな…」と思ってしまい、応募につながりません。 任せたい仕事内容を具体的に記載し、求職者に「ここなら働くイメージが湧く!」「過去の経験を活かして活躍できそう!」と思ってもらえるようにしましょう。③ペルソナに「応募したい!」と思わせる情報が記載できているかを見直すありきたりな内容や自社が伝えたい情報を求人票に羅列するのではなく、ペルソナの興味や関心を引く情報は何か、どのような情報が伝われば不安が解消されて応募したくなるのかを考えて情報を記載することが大切です。④「必須要件」「求める人物像」に記載する要件の数を減らす「必須要件」「求める人物像」に箇条書きで多くの要件が記載されていると、求職者は「この会社は求めることが多くて、ハードルが高いな…」「自分には厳しそうだな…」と尻込みし、応募しなくなってしまいます。 「組織課題を解決するために最低限これだけは入社前から備わっている必要がある」という要素以外は求人票に記載しないのが得策です。2.3.3 提示年収、諸条件を見直す募集職種の求人票に記載した提示年収帯や諸条件と市場や他社の提示年収帯や諸条件の乖離が大きいと、自社の求人の魅力が下がってしまい、応募につながらなくなってしまいます。 応募を獲得するためには、採用市場という全体像を意識し、その中で自社の求人の条件は見劣りしていないか?を考慮することも重要です。3. スカウト経由の応募を増やす方法ダイレクトリクルーティング媒体の一番のメリットと言っても過言ではない、求職者に直接アプローチできる「スカウト」経由の応募を増やす方法を大きく3つに分けてお伝えします。3.1 スカウトを送信するターゲットを見直すスカウト経由の応募を増やすには、「いつ」「誰に」「どのような内容」のスカウトを送信するかを考えることが重要です。ここでは「誰に」にフォーカスしてスカウト経由の応募を増やす方法を解説します。3.1.1 細分化し、複数設定したターゲットに合わせて求人票を複数作成する募集職種に対して、「スカウト送信ターゲットを幅広く設定しすぎている」「1つしかターゲットを設定していない」というケースがあります。 ターゲットの幅が広すぎるアプローチは、求職者に「このスカウトは自分に対してのものなのか?」「ズレていないか?」という不信感を抱かせやすくなります。 1つしかターゲットを設定していないと、ターゲットがズレていたときに応募がまったく得られなくなり、非効率な採用になってしまいます。これらの問題を解決するためには、基準を決めてターゲットを細分化し、複数設定したターゲットに合わせて複数の求人票を作成し、スカウトに添付して送信するとよいでしょう。 以下に、悪い例と良い例を示します。3.1.2 スカウト返信率が高い傾向にある求職者にスカウトを送信するこれまでのスカウト返信率が高い求職者や直近で媒体にログインして積極的に転職活動をしている求職者に絞り込んでスカウトを送信するのも効果的です。 以下の点に気を配って媒体の検索画面で求職者を検索し、アプローチをしてみてください。①「スカウト返信率が高い求職者」にチェックを入れる媒体によっては、これまでに受け取ったスカウトメールへの返信率が高い求職者を絞り込むことができます。 反応がいい求職者にアプローチをすることで、スカウト経由の応募を増やせます。②「最終ログイン日」を「1日以内」や「3日以内」など直近に設定する表示される求職者数を担保するために、最終ログイン日を「2週間以内」や「1ヶ月以内」に設定して求職者を検索される方が多いと思います。 ここは思い切って「1日以内」や「3日以内」で絞り込み、直近で媒体にログインしている(= 積極的に転職活動をしていると予想される)求職者にアプローチをしていきましょう。補足表示される求職者がいなくなった場合に取る行動として以下の2つがありますが、「b.」のほうがスカウトの返信率が高いので、スカウト経由の応募を増やすには、最終ログイン日が直近であることが重要と言えます。a. 最終ログイン日を「2週間以内」や「1ヶ月以内」 にするb. 最終ログイン日は「1日以内」や「3日以内」のままで、スカウトを再送信する③「就労状況」は「離職」や「離職予定」にチェックを入れる媒体によっては、就労状況(問わない、現職、離職、離職予定など)で求職者を絞り込むことができます。 「離職」の求職者は退職済みのため、「離職予定」の求職者は退職日が決定しているため、次の会社を急いで探していることが多く、スカウトへの返信率が高い傾向にあります。 募集職種の採用目標月が迫っているときや急ぎで人材が必要になったときは、積極的に「離職」の求職者にアプローチをするといいでしょう。3.2 スカウト開封率を改善する方法スカウトを送信するターゲットの見直しができても、送ったスカウトが求職者に開封されなければ応募を増やすことはできません。ここでは、スカウト開封率を改善する方法の一例を示します。タイトルの冒頭から15文字程度に訴求ポイントを記載するスカウトを受け取った求職者に、件名の全文が表示されるわけではありません。 媒体にもよりますが、冒頭から15文字程度が表示されることが多いので、冒頭から15文字以内で訴求ポイントを記載し(【フルリモート】【フルフレックス】など、フックになりやすい単語を記載)、求職者に「条件が良さそうだな」「現職での不安や不満が解消されそう」「気になるからスカウトメールを見てみよう」と思わせ、開封につなげることが重要です。3.3 スカウト返信率を改善する方法スカウトが開封されても、返信を得られなければ、スカウト送信の目的を達成したとは言えません。 スカウト返信率を改善する方法も非常に重要な内容のため、別の記事で詳細をまとめています。4.「いいね」や「気になる」経由の応募を増やす方法ダイレクトリクルーティング媒体では、上述した自己応募、スカウト経由の応募に加えて、企業が求職者に送った「いいね」や「気になる」経由の応募もあります。 ここでは、「いいね」や「気になる」経由で応募を増やす方法を解説します。4.1 「〇〇(職種別)オープンポジション」という求人票を作成し、採用要件を満たす求職者に「いいね」や「気になる」を送る「Webエンジニア オープンポジション」や「セールス オープンポジション」のように、職種別のオープンポジションの求人票を作成し、採用要件を満たす求職者全員に対して「いいね」や「気になる」を送るという方法があります。 オープンポジションの求人情報とともに求職者に「いいね」や「気になる」を送ることができるので、求職者との接点を増やすことにつながり、応募の増加が見込めます。5.ダイレクトリクルーティング媒体と他の採用方法も併用して応募数を増やすダイレクトリクルーティングは、応募者との直接的なコミュニケーションを促進し、より関心の高い候補者を獲得する効果的な手法です。この戦略を活用することで、より多くの優秀な応募者と出会い、組織の成長と成功に貢献することができます。しかし、ダイレクトリクルーティング媒体だけでなく、他の採用手法も併用することを忘れないでください。採用活動は多面的なアプローチが必要であり、様々なチャネルを組み合わせることでより幅広い層にアピールすることができます。