採用を成功させるには、適切なターゲット設定が不可欠です。 そのためには、モレやダブりがない状態(MECE:ミーシー)にターゲットを分類する必要があります。 本記事では、「MECE」の考え方をベースに採用ターゲットを作成する手順を解説しています。 採用ターゲットのモレやダブりをなくし、効率的に求職者にアプローチできるようになりましょう!1. 「MECE(ミーシー)」とは?MECEは、戦略コンサルティングファームのマッキンゼーの社内用語であり、「Mutually, Exclusive, Collectively, Exhaustive」の略で、「モレなく、ダブりなく」を意味します。 物事を考える際に、必要な要素を網羅し、要素の重複が発生しないようにする考え方です。「モレ、ダブり」のイメージがしやすいように、以下に「モレあり、ダブりあり」「モレあり、ダブりなし」「モレなし、ダブりあり」「モレなし、ダブりなし」の図を示します。1.2 なぜMECEが重要なのか物事をMECEに考えられると、要素をモレ、ダブりなく分類できるようになります。 そうすることで物事の全体像を正しく捉え、問題や課題を構造化でき、より考えやすくなるので、意思決定の質を高められます。 また、物事がMECEになっていないと、以下のような弊害が生じるので、注意しましょう。 補足採用ターゲットを設定する場合は、完璧な「モレなし、ダブりなし」を目指すのではなく、多少の「モレあり、ダブりあり」という認識でOKです。 MECEにしすぎることにとらわれて、ターゲットにこだわりすぎるのも良くありません。 重要なことは、「自社の組織課題を解決するのはどのような人材か?」を考えることです。2. MECEを活用した採用ターゲットの作成手順MECEの考え方をどのように活かして採用ターゲットを作成すればいいか、手順を解説します。前提1つの求人に対して1つのターゲットだけを設定すると、対象範囲が広くなりすぎ(狭くなりすぎ)てしまい、多くのモレが生じます。 この問題を解消するために、1つの求人に対して複数のターゲットをMECEに作成し、効率よく母集団を形成できるようにします。必須要件を言語化するターゲットをMECEに分類できる要素を決める決めた要素を切り分け、かけ合わせて、複数のターゲットを設定する設定したターゲットが市場にどれくらいいるか調べる2.1 必須要件を言語化する「この要件を満たしていれば、書類選考合格、スカウト送信の対象になる」という必須要件を言語化しましょう。 求人媒体に登録されたプロフィールや書類を見て、◯ か ✕ かを判断できる要件を決めることがポイントです。 必須要件を言語化するときの良い例と悪い例は以下の通りです。2.2 ターゲットをMECEに分類できる要素を決める「どのような要素を設定すると、募集職種のターゲットをMECEに分類できそうか」を決めます。 決めた要素を分類する際には、「層別分解」や「プロセス分解」の考え方が役立ちます。2.2.1 層別分解全体を複数の部分の集合に、「層」のように分解する手法です。 層別分解の例 年齢別、年代別 季節別 日本国内の地域別 販売チャネル別 商品カテゴリー別など上記の例では、対象を「年代別」に切り分け、「モレなし、ダブりなし」の状態にしています。2.2.2 プロセス分解物事が起こる一連の流れをプロセスごとに分解する手法です。プロセス分解の例セールスが顧客との接点を持ってから販売に至るまで 採用担当者が母集団を形成してから内定承諾を獲得するまでなど上記の例では、採用担当者の仕事をプロセスごとに分解し、「モレなし、ダブりなし」の状態にしています。2.3 決めた要素を切り分け、かけ合わせて、複数のターゲットを設定する「2.2」で、以下のように3つの要素を設定したとします。これらの決めた要素をどのように切り分け、かけ合わせると、ターゲットがMECEになるのかを意識しながら、募集職種のターゲットを複数設定していきます。 要素の切り分け方、要素をかけ合わせて複数のターゲットを設定する方法を解説します。2.3.1 決めた要素を切り分ける採用ターゲットをMECEに分類するために、特定の要素を決め、その要素をモレなく、ダブりなく切り分けます。よく用いられる要素の切り分け方は以下の通りです。 これら以外にも、ターゲットをMECEに分類できる要素はたくさんありますので、「こういう要素で切り分けるとよさそう」という要素を自分なりに考えてみることが重要です。2.3.2 切り分けた要素をかけ合わせ、複数のターゲットを設定する「2.3.1」で要素を切り分けたら、どの要素同士をかけ合わせると、ターゲットとして妥当になりそうかを考えます。 以下の図のように、要素のかけ合わせを決め、複数のターゲットを設定します。2.4 設定したターゲットが市場にどれくらいいるか調べる「2.3」で複数のターゲットを設定して終わりにしてはいけません。 せっかく時間をかけてターゲットを複数に分類できても、そのターゲットが転職市場に存在しなければ意味がありません。 求人媒体で検索条件やキーワードを入力して、「設定したターゲットが転職市場に何人くらいいるのか?」を調べましょう。 ターゲットに該当する求職者があまりに少ない(いない)ようでしたら、「2.1」に戻ってターゲットを作り直す必要があります。3. 例題と解説実際に、以下の例題をもとにMECEなターゲットを作成してみます。あなたの会社で、PHPを用いた開発を担うテックリードを募集することになりました。 MECEの考え方を用いて、ターゲットを3つ設定してください。「2. MECEを活用した採用ターゲットの作成手順」に則って例題の解説をします。3.1 担当部署にヒアリングを行い、必須要件を言語化するテックリードが所属する部署の責任者に「この要件を満たしていれば、書類選考合格、スカウト送信の対象になる」という必須要件をヒアリングし、言語化しましょう。 ヒアリングの対象者に、求人媒体に登録されたプロフィールや書類を見て、◯ か ✕ かを判断できる要件を挙げてもらうように伝えることが大切です。 ここでは、以下が必須要件として判明したとします。3.2 ターゲットをMECEに分類できる要素を決める「3.1」で得た情報をもとに、「どのような要素を設定すると、募集職種のターゲットをMECEに分類できそうか」を決めます。 ここでは、以下の3つの要素を設定し、ターゲットを分類することにします。3.3 決めた要素を切り分け、かけ合わせて、ターゲットを3つ設定する「3.2」で決めた要素をそれぞれ細分化し、かけ合わせて、3つのターゲット(ターゲット①②③)を設定します。3.3.1 「求職者の年齢」で切り分けるまずは求職者を年齢で切り分け、どの年齢の方をターゲットにするか決めます。 ここでは、20歳〜49歳の求職者を5歳刻みで切り分け、その中からどの年齢の求職者をターゲットにするのか考えます。3.3.2 「PHPを用いた開発の経験年数」で切り分ける次に、PHPを用いた開発の経験年数で切り分け、どれくらいの経験年数がある求職者をターゲットにするのか考えます。 「4.3.1」で決めた求職者の年齢と合致するであろう開発経験の年数でターゲット①②③を設定します。3.3.3 「バックエンドの開発プロセスにおいて、どの仕事を経験しているか」で切り分けるターゲット①をテックリード未経験者、ターゲット②③をテックリード経験者と設定し、未経験者と経験者それぞれの仕事のプロセスを洗い出し、「どの仕事を経験していれば、採用ターゲットになるのか」を決めます。 以下にテックリード未経験者、経験者が担っているであろう仕事のプロセスの例を示します。仕事のプロセスを分解し、ターゲット①②③が経験している必要がある仕事を以下のように決めます。3.3.4 切り分けた要素をかけ合わせて、ターゲットを3つ設定する「3.3.1」から「3.3.3」で切り分けたターゲット①②③の要素をかけ合わせて、以下の図のようにターゲットを3つ設定します。3.4 設定した3つのターゲットが市場にどれくらいいるか調べる「3.3」で設定したターゲット①②③の「要件」を媒体で検索し、ターゲットが転職市場にどれくらいいるのか調べます。 以下の図は、ビズリーチでターゲット①に該当するキーワードや検索条件を設定した例です。※例なので、キーワードの「いずれかを含む」にはわかりやすく「教育」「育成」という単語を入力していますが、実際に検索する際には「教育」「育成」に類する単語を複数入力することをおすすめします。4. MECEを意識して採用ターゲットを選定しようMECEは、情報や要素をモレ・ダブりなく整理することを目指します。採用ターゲットを形成する際、MECEの原則を活用することで、効果的な戦略を構築することが可能です。情報を重複なく整理することで、ターゲットの特性やニーズをより正確に理解し、それに基づいたアプローチを取ることができるでしょう。MECEの考え方は、採用プロセスにおいても非常に有益です。異なる要因を網羅的に分析し、それぞれがどのように相互関係しているかを把握することで、適切な応募者プールを構築するための方向性が見えてきます。MECEを意識しながら採用ターゲットを選定し、より効果的な採用戦略を展開していきましょう。